IT2016報告集_個人7

第4回海外学習助成事業の報告集 1年 OTH さん

参加者から提出された報告レポートです。個人名や写真の表現・配置等にオリジナルとは異なる点はご容赦ください。皆さんのレポートは下の略名をクリックして頂くとご覧いただけます。
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イタリア3都市(Milano, Firenze, Roma)を巡る6泊8日の旅

研修を終えて

私がこの海外研修に参加した主な理由は、イタリアでしか見られない芸術作品を生で自分の目で見たいと思ったからです。7日間で多くの絵画、建築物、彫刻を目の当たりにしましたが、全然写真で見るのとは違い、全てが自分の想像の域を超えるもので、これらを作りだした芸術家にただただ尊敬の念を抱くばかりでした。

システィーナ礼拝堂の「最後の審判」

その中でも、私は多くのミケランジェロの作品に魅了されました。特に、バチカン市国にあるシスティーナ礼拝堂の「最後の審判」、「天井画」は、本当にすごくて今までの人生の中で1番感動しました。まず、人の多さに驚きます。堂内の床が見えないほどの人、人、人です。その人たちの目線は上に集中していて、皆立ち止まり、呆気にとられたような顔をしています。自分も早くその絵を見たい衝動を抑え、「最後の審判」に背を向け、やや下を向きながらガイドさんに連れられ、堂内の中央に来ました。皆があんなにみとれてしまう作品とはどんなものだろうと思いながらドキドキ後ろを振り返ると、ものすごいスケールに圧倒されました。もう放心状態です。こんなものがこの世の中にあるのかと思いました。

独特のムキムキの裸体像

自分の視界いっぱいに広がるミケランジェロ独特のムキムキの裸体像、その力強さだけでなく、キリストの裁きに安堵や失望を感じた人の表情から心情までもが伝わってきました。私の中でキリストは神聖で落ち着いているイメージがあるので、ここまでやるかというほどの筋肉質な体に違和感を覚えました。腹筋の割れや太もも、肩の筋肉の膨らみによってさらに力強さを増しているのが分かります。これは、自分の中で思い描いたストーリーなのですが、キリストは怒っているのではないかと思います。

キリストの周りにいる人は誰もが天国に行きたいと思っているでしょう。その人たちはキリストを見ていて訴えかけるようです。そんな人の欲への怒りが、大きく上げた右手と、その表情に表れているように私は思えます。また、キリストの右側には天国、左側には地獄行きの人々が描かれているのですが、左側の方が少し人数が多い気がします。中央下の天使の手には、地獄行き、天国行きの人々の名前が書かれているという紙があり、地獄側の方が分厚いことが分かります。これが現実だと突きつけられているようで何だか悲しかったし、自分の行いはどうなのかと問われている気分になり、この絵にどんどんのめり込んでいくのが分かりました。
そして、そのまま目線を上に向けると、そこには絵とは思えない天井画が広がっていました。

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絵と絵の間はまるで柱が彫られたようで、ミケランジェロの技術の高さに立ち尽くすばかりでした。たぶん、私はずっと口が開いていたと思います。追い打ちをかけるように、中央の絵の横に描かれた預言者の人の影や服のしわの立体感が、私たちにこれは絵だと認めさせてくれません。これが平面に描かれたものだと思うことがどうしてもできませんでした。写真撮影禁止なほど神聖な場所であるため、ざわざわしていると「quiet please.」の声が流れていましたが、声をあげてしまうのは仕方ないと思いました。無意識に声があがってしまうほど凄まじいものに取り囲まれたのです。天井も壁も隅から隅まで装飾が施されたこの異空間にずっといたいと思いました。ずっと眺めていても全く飽きなくて、本当にしびれました。

ミケランジェロの「ダビデ像」

そして、私たちはフィレンツェでミケランジェロの「ダビデ像」も見ました。通路の横に未完成の彫刻が並んでいて、その奥にダビデ像が見えました。上から光に照らされながら立っているダビデ像へ自分たちが導かれていくようで、厳かな雰囲気が漂っているのを感じました。

近づいて目の前にするとその巨大さが分かります。見上げなければなりません。それに、筋肉の質感がすごいです。あばらのへこみと盛り上がりを繰り返す部分とか、首の筋とか、本当にリアルでまさに傑作だと思いました。また、ダビデ像の周りをぐるっと回ることもでき、想像もつかなかった後ろ姿を見ることができました。後ろも決して前に劣らず、膝裏の腱やふくらはぎの筋肉の正確さにすごい…と息をのみました。でもこの作品が注目される理由は大きさだと思います。今回見たどの彫刻作品よりもずば抜けて大きいのに、それを倒さず、かつ、バランスのとれた体を彫りあげる巧みな技にうなります。自分がいざ、このダビデ像を彫ろうとしたらどうなるかと考えてみても、まず石を彫るための力が足りるかも分からないし、なんて言ったって、石から像ができるイメージが浮かばなくて、どこをどれだけ彫ればいいのか混乱するだろうと思います。今から約500年前に作られたものとは思えません。

他にも「ピエタ」や「聖家族」を見て、本当にミケランジェロは超人だと痛感しました。この海外研修に行く前は名前さえも知らなかったのに、作品に度肝を抜かれ、神のごときミケランジェロにしてやられたと感じています。今の時代の人もこんなに感動させられるなんて、もう本当にすごいしか出てきません。

海外研修から日本に帰ってきて、自分はものすごく貴重な体験をさせていただいたのだとつくづく感じています。日本とは違うイタリアの生活スタイルも学びました。チップを払ってトイレに入ったり、ジプシーがたくさんいる地下鉄に乗ったりして新鮮な7日間を過ごしました。初めて接するイタリア人は、陽気で自由で優しかったです。「ブォンジョールノ」「チャオ」や「グラッツェ」「プレーゴ」のやりとりが自分にはとってもうれしくて、温かかったです。帰国してからも言ってしまいそうで、イタリア人のフレンドリーさが恋しくなります。

日本を出て、本当に初めて知ることばかりでした。行く前はこれっぽっちもイタリアのことを知りませんでした。本物を見て帰国してきた私は、行く前に比べて知識が増えたと自分自身感じています。一緒に行った仲間と「ドゥオモのクーポラからの眺め最高だったね。」とか「メディチ家がルネサンスを支えたようなものだよね。」とか、思い出話をすることがとても楽しいし、このようなワードが自分の口からさらっと出てくるほど、たくさんのものを吸収してきたのだと感じます。これも事前研究にたくさんの時間を費やしたり、細かいところまで丁寧にガイドをしていただいた方々のおかげです。ありがとうございました。

私はもうすぐ学校の授業の世界史で、古代ローマを習うところです。今回訪れた場所がたくさん教科書に載っていて、これからさらに知識を深められることにとてもわくわくしています。海外研修を通して、知らないことを知ることができる、それを自分のものにできることは成長できるし、何よりも楽しいことだと分かりました。素敵な体験をさせていただき、本当にありがとうございました。