第2回海外学習の個人別レポート 1年 T.N さん
参加者から提出された報告レポートです。個人名や写真の表現・配置等にオリジナルとは異なる点はご容赦ください。皆さんのレポートは下の略名をクリックして頂くとご覧いただけます。
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これがパリ! そして ロンドン!
私がこの旅行に参加した理由は、海外で味わう雰囲気を実際に自分がどう思うか体験してみたかったからです。日本の中だけでは感じることができないもの、海外へ行くことで初めて気づくことがたくさんあると思っていました。実際その通りで、驚くこと、感動するものが山のように押し寄せてきた海外研修でした。
■これがパリ!
パリでの研修中は、これまで画集や映像でしか見たことのない芸術作品を手で触れられそうなほど近くで体験することができ、本物の色、本物の形、構成を味わえたことで感動の嵐でした。ルーヴル美術館に収蔵されている有名な『モナ・リザ』は目の前にしたときはそれを『モナ・リザ』だという事に一瞬信じることができませんでした。想像よりもかなり小さく、教材で見た時の迫力はありませんでした。撮影は可能ですが、柵があり傍までは寄れず、強固なガラスで守られている様子から国有財産としての貴重さがとてもよく伝わりました。
一方で私はイタリアの画家、ヴェロネーゼの『カナの婚礼』に感銘を受けました。倫理の資料で見て想像していたよりも大きく、迫力があったのです。聖書による、キリストが行った最初の奇跡、水を葡萄酒に変えたという題材も、描かれている人々の服装や装飾物が絵の大きさに相まって、その重厚感に圧倒されてしまいました。
有名さではルーヴル級ではありませんが、個人的にはオルセー美術館の方が素晴らしいと思いました。なぜなら印象派の絵がたくさん展示してあり、その展示手法が考え抜かれていて、絵を鑑賞する感覚を研ぎ澄ませてくれるからです。
オルセー美術館には『ルノワール』に『モネ』、さらに今回の研修で私が見たかったドガの『踊り子』もあります。ここは写真撮影は禁止なので自分の目で記憶するしかありません。ルーブルと違い、絵と目の間が30センチほどになるほど近くで見ることができるので、色使いや描き方などを詳細に見ることが出来ました。
ドガの『ダンス教室』や『踊りの花形』は、衣装の裾の描き方が柔らかく、細かいブラシの線の箇所などは非常に繊細に描かれていて近距離で見たからこその捉え方ができました。『ルノワール』や『モネ』の絵も、光の描き方が素晴らしく、色の乗せ方や柔らかな描き方の感触など写真では得られなかった感覚を味わい、何よりも、これは事前学習で学んでいたことですが、近年のリニューアル工事により、オルセー美術館では飾られている絵をさらに際立たせられるよう、濃い紺や紫、などで壁面や壁を塗り分け、暗い背景で絵を鑑賞するのです。実際、その空間に立って絵を眺めてみると作品が光を放つかのように見えました。これらの大胆な色は、日本ではなかなか体験できないと感じました。ここでは時間が早く感じ、もっと長い間鑑賞し続けたい場所でした。画家によって描き方の手法が全く違う、多様さがあるオルセー美術館、また改めて一日、足りなければ何日使っても、もう一度全ての絵を見て回りたいと強く、強く思いました。
パリの人々はとても親切でフレンドリーな人ばかりでした。初めて現地のスーパー『MONOPRIX』で買い物をしたときに会計の仕方が分かりませんでした。ベルトコンベアーに乗せて会計が終わったらすぐにその場で袋に入れます。しかしそれが分からなくレジの人が何をしてほしいのかも分からず頭が真っ白になってしまいました。すると後ろに並んでいたおばあさんが身振り手振りでどうすればいいのか教えてくれました。街中では「Bonjour(ボンジュール)」というと返してくれたり、英語で道を聞いたらフランス語ですが、わかるようにゆっくりと教えてくれました。ホテルでは部屋への帰り方が分からなくて困っていると他の宿泊客の方が「Can I help you?」と言ってくれ、説明するとエレベーターまで連れて行ってくれました。現地の人とコミュニケーションをとることで気づいたことは笑顔でいることです。たとえ分からない言葉があっても表情を付けるだけで垣根が下がり、ぐんと伝わりやすくなると強く感じました。海外だからといって臆することなく堂々とし、コミュニケーションを取ればいいのだと実感しました。
フランスで感じた日本との違いは現地の人たちの人柄です。レジの人や街を歩いている人はとてものんびりしていてマイペースでした。レジの人は私の前で会計をしていた人とおしゃべりを始めていました。このようなゆったりとした生活ができる国だな感じました。さらにお店に入るときや会計をするときは必ずと言っていいほど挨拶を交わします。これも素敵な文化だと思いました。更に車道には車線がなく、フランスの人は規制があまり好きではないそうです。けれども事故も見られず、どの車も車線がなくてもスムーズに走っていました。まさに自主自律です。フランスは水道水が石灰分が多いためあまり飲まない方がいいそうです。そこは日本の水のおいしさを学ばされました。
パリは建物の高さ、煙突の高さが決められています。景観を統一するためです。すると道路に沿って植えられていた木の高さも揃えてあるという事に気づきました。これは日本にはない様子で興味深い景色でした。地下鉄の車両ではアコーディオン奏者が乗ってきました。電車の中で演奏してお金をもらうのです。こんな賑やかな出来事もフランスならではで素敵光景だと思いました。
花の都、パリと言いますが怖い思いも体験しました。パリは観光地の安全度が割合低く治安が悪い街でもあるのです。
パリに到着したのは夜でしたが、ホテルへ向かう途中、バスのドライバーさんが夜のエッフェル塔に立ち寄って下さいました。フランス、パリを象徴するエッフェル塔を目の前にし、ライトアップされて言い表せないほどに美しい圧倒的な存在感に言葉もなくひたすらカメラを向けていました。気づくと、周りには観光客に小さなエッフェル塔を売ろうとするジプシーがたくさんいます。ジプシーは移民なのですが、中にはスリや、詐欺をしてお金を稼いで生活している人もいるそうです。私はその日初めてジプシーを見たのですが、一見すると怖い顔で背が高く「1ユーロ」と言って近づき、なかには「こんにちは」と日本語で声掛けもしてきます。接触できると物を売りつけたり、隙を見てスリをするそうです。声をかけられても無視し続けたからかそれ以上は関わって来ませんでした。
観光名所だけでなく、地下鉄でもやはりスリがあります。私たちは地下鉄を利用してさまざまな所へ研修に行きましたが、ガイドの方にも「地下鉄は寝たりなんかしたら盗まれるから絶対だめだ。」「中では奥の方にいるか、椅子に座っていた方がいいですよ。」と言われました。これは降りたり乗ったりで人が多くなる際に死角や隙が発生するからです。
出発前も現地でも、とにかくパリではスリには気を付けるように、とたくさんの人から言われていました。私には自分がスリにあう自信がありました。人からはのんびりしているように見られている自覚があったからです。
だからカバンにはすごく注意をはらっていて何も盗まれませんでしたが、海外にはさまざまな形で犯罪や危険が待ち構えている一端に触れ、日本の治安の良さを改めて認識することが出来ました。
■これがロンドン!
パリでのさまざまな体験や思い出を抱えて、次に向かったロンドンですが、日常的でとても親しみやすい街並みが好印象でパリよりも好きになりました。英語が母語ということもあって、看板、メニューなど理解できるものが多く一層身近に感じることが出来ました。
ロンドン研修の目玉である大英博物館では、エジプトの文書翻訳の鍵となり、今や多くの人々に知られている「ロゼッタストーン」を直接見ることが出来ました。
資料などでイメージしていた大きさよりも実物はかなり小さくて、高さ約120cm程度でした。一番下がギリシャ文字、二番目に民衆文字、一番上はヒエログリフという文字で王族の人たちによって使われた文字で書かれています。このロゼッッタストーンが発見された時はギリシャ文字は解読することができたため、同じことが3種類の文字で書かれているのでヒエログリフまで解読することができるようになったそうです。見てみると王様の名前は丸がつけられているのがはっきりと分かります。これがエジプトの文書を読み解く鍵になったのですが、歴史の差が生み出すこの石の価値の大きさに心揺さぶられるものを感じました。
ロンドンでも基本は地下鉄とバスでの移動です。一日乗り放題券を購入し、市内を回りました。地下鉄はsubway(米)ではなくunderground(英)と呼びます。私がイギリスの地下鉄で強く印象に残った点は、まず、車両の天井が日本よりもかなり低く、180センチ程の人は頭が天井についてしまいそうでした。そしてフランスも同じでしたがドアを閉めるのが早く、素早く乗り降りする必要がありました。日本は朝、駆け込み乗車をする人が学生から大人までたくさんいますが、ここではそうはいきません。乗客安全第一ではないのです。車内ではiphoneケースのポケットにクレジットカードを入れている人を見ました。それはフランスよりも安全であることを物語っているようでした。乗客のマナーは座席に寝そべるようなパリと比べて品位がありました。
市バスは、ダブルデッカーという名の赤い二階建てで有名です。バスの二階からの景色は走っている車が下の方に見えるので、視界が広く街並みを堪能することが出来ました。
ちょっと驚いたことは、バスには停車合図ボタンはありましたが、つり革がないのです。走行中はかなり揺れるので、座れなければポールに?まるしかありません。
ロンドンで感じた日本との違いとしては、レディーファーストの文化です。ホテルでの朝、オムレツを目の前で作ってくれるコーナーに並ぼうとすると小学生くらいの男の子が「ladies first」と言って順番をかわってくれたのです。これが噂のレディーファースト。低年齢にすら浸透しているのです。それなのに突然で驚き、気後れしてしまい、まともなお礼も返せませんでした。
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Shopでは店員の方も明るく、笑顔で挨拶をしてくれて楽しく買い物をすることができました。日本にはない人の明るさは、もう一度ロンドンに行きたい、ロンドンが大好きだ、と思わせてくれる特徴でした。
さらにイギリスの料理は、味が単調で不味いということで知られていますが、私は味付けが濃くなくフランスよりも馴染みやすい味でとてもおいしく感じました。サンドイッチをたくさん食べましたがトマトやレタスが新鮮で胃もたれもせず、パン生地もまた日本とは違う味わいでした。紅茶の老舗であるフォートナム&メイソンでいただいたイギリスのアフターヌーンティーはまろやかなバターと、程よい甘さのジャムを付けて食べるスコーンに、砂糖を入れなくても十分おいしく香りのよい紅茶は涙が出るほどおいしくて感動に包まれました。お金を貯めてもう一度ここへ食べに来ようと強く心に誓いました。
私にとってこの研修は、海外の雰囲気を感じるためだけではありません。もう一つの理由があります。それはCAになりたいという夢を再確認することです。私は一度も飛行機に乗ったことがありませんでした。ですから、この研修を機にCAの仕事を目の前で見て、夢を確かなものにしたいと思っていました。実際に飛行機に乗ってみるとCAは外国人ばかりで、日本人のCAの人には会えないのかな、と思っていましたが、機内食を運びに来た方が日本人でした。外国人のCAが多い中、働いている日本人の方は英語で会話をし、手際よく仕事を進め、華やかに見えました。こんな風になれたら、とその仕事ぶりを目に焼き付けていました。
また、今回の研修でこんな仕事もあるのだな、と感じることもありました。例えば、添乗員の有馬さんの仕事です。そもそも私がCAになりたいと思った理由は世界へ羽ばたけるような仕事がしたかったからです。有馬さんの話を聞くと、たくさんの国へ行くとおっしゃっていました。ロンドンのデパート、ハロッズには日本人の店員もいました。海外で仕事をしてみたいと強く思いました。これらを踏まえると今私に必要なもの、それは英語力です。4月から学年も変わりますので、気持ちを入れ替えてさらに勉強に励みたいと思います。特に英語です。積極的にTOEICや英検など、今後のためにも受けていきたいです。
今回の海外研修を終え、改めて感じ入ることは、多くの美術は宗教の影響を受け、製作されているということです。1年生で習った倫理の授業で宗教についても学びましたが、ルーヴル美術館やオルセー美術館などで見た絵の多くは歴史や宗教が関わっているものでした。絵の持つ歴史的背景、画家がその絵を描くに至った物語や、西洋美術の解説も知識として持ち合わせながら鑑賞すると、ただ漠然と絵を眺めているよりも深みのある見え方が出来るのだとこの研修に行って強く感じました。そこで2年生から世界史の授業があるので、そこで習うことを今回見てきた芸術と結び付けていけたら、と感じます。今後世界史はもちろん、地理や倫理も自分で学習するなどし、今よりも知識を豊富にしてもう一度見に行った時、今回にはない感動を得られると思います。建築物に関しても、その国の成り立ち、風土、建築材料の違いで日本とは全く違う街並みになるのです。そして今回訪れた2ヶ国は、その積み上げてきた街並みを文化財として大切にしていることは、お店の作り方や看板など至る所で見受けられました。日本以外の地で、新しいものより古いものが多く残る都市を巡り、文化、芸術、建築、語学に直に触れられたこと、写真ではなく実物を目の前で見られたことで思うことは、私に足りない知識の部分を改めて実感させ、そしてその足りない部分をできる限り充実させてからもう一度改めてフランス、イギリスへ行き、今回以上の体験をするのだ、と強く決心しました。この1週間というのは私にとってかけがえのない宝物となり、私のこれまで、そしてこれからの人生にとって重要な出来事となりました。
支援をして下さった熊沢さんはじめ一般財団法人瑞陵高校助成基金のみなさん、事前学習のときから私たちのために時間をさいて準備を手伝ってくださった高校の先生方、想像をはるかに超えたすばらしい研修にしてくださった添乗員の有馬さん、旅行会社の加藤さん、現地ガイドの方々、そしてこのためにお金を出してくれ、帰ってくるまで私の無事を心配していてくれた家族のおかげであるということを決して忘れません。基金の日比野先生が、出発前のスピーチで、この研修を実現させるまでの様々な過程を教えてくださった時に流されていた涙は、そのお話と共にしっかりと記憶に刻まれています。心から感謝しています。本当に、本当にありがとうございました。