一般財団法人 瑞陵高校助成基金は、瑞陵生の学びを深めるための支援を行っています。

US2019報告集_個人4

第7回海外学習助成事業の報告集 2年 YKH さんのレポート

 参加者から提出された報告レポートです。個人名や写真の表現・配置等にオリジナルとは異なる点はご容赦ください。皆さんのレポートは下の略名をクリックして頂くとご覧いただけます。
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スミソニアン博物館群とメトロポリタン美術館見学の旅8日間

はじめに

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 今回のアメリカ研修に申し込んだ動機は、提出した作文に書いた「将来は国境を越えて働く仕事をしたいから」ということや英語を学ぶことよりも、アメリカに対する単純な好奇心、憧れからだった。だから、研修に行けることが決まったときは内心とても驚いた。ただ、申し込みの動機が非常にぼんやりしていたため、事前学習を進めていく中で、何を、どのような視点で見て、何を学ぼうとするのかの個人的な研修の目的の明確化が必要だった。そのなかで、メジャーな観光スポットに行っただけの旅行やガイドブックに載っている物事を確認するだけの旅行ではなく、実際に行かなければわからないような何かを自分の目で発見する旅行にしたいと思い、ちょっとした文化の違いを意識的に観察して吸収することを個人的な目的に設定することにした。

 実際にアメリカに行ってみると、アメリカの食事はイメージ通りだった。ハンバーガーやホットドッグの店が街に溢れ、料理の付け合わせにはフライドポテトやソーセージ。意識して野菜を摂らないと確実に肥満へまっしぐら。世界一の肥満大国なのも納得の食生活だ。予想外だったことはニューヨークチーズケーキの味が濃く、デザートにしては重くて食べるのが大変だったことくらいだった。
 コーラもよく飲んだ。もはや水と同じ感覚で飲んでいるみたいだ。炭酸が抜けるのもお構いなしで上の空いたピッチャーで出されたのは少し衝撃だった。僕は普段好んでコーラを飲まないので、この研修の1週間で今までの人生の通算で飲んだ量と同じくらいのコーラを飲んだ気がする。

 買い物の支払いはあえてデビットカードではなく現金で行った。しかし10セントと5セントが同じ銀色なのになぜか10セントの方が小さいことに慣れず、なかなかコインを使いこなせなかった。でもよく考えてみると日本の5円玉も金色で10円玉より高額硬貨の感じがする。これが海外にいることで日本を客観視することの第一歩なのかな、と思った。
 地下鉄や公共のバスに乗ったときはアメリカの人々の日常を見るよい機会だった。独特の乗車システムやホームの一つの線路に全路線が乗り入れること、車両の急発進などの面白い違いは見つかったが、思ったほど日本との大きな違いはなかった。他にも地元の人が行くスーパーマーケットに行く機会もあったが、システムの違いに多少は戸惑うことがあっても、将来アメリカに住むことになったらなんとか暮らしていけそうだと思えた。
 他にも、温度の華氏、液体の量のオンスなどの見慣れない記号に戸惑ったり、シャワーの水の出し方や温度調節に苦労したり、向かいから来る人のためにドアを押さえることを意識したりと実際に現地に行かないと体験できないちょっとした違いを肌で体感して、また一つ成長できたと思う。

 また、この研修の主目的の「本物を見てくる」ことも達成できたと思う。僕自身、宇宙開発や化石、考古学などに関心があり、研修で訪れた博物館、美術館の中でもスミソニアン博物館群の航空宇宙博物館と自然史博物館、ウドバー・ハジー・センター、ニューヨークの自然史博物館を楽しみにしていた。反対に美術に関してはそれほど関心が無く、さらに僕の中学校では美術の筆記テストが無かったので画家や作品についての知識もあまりないため、楽しめるか少し不安だった。しかし、訪れた美術館はどれも予想を超えたスケールの、一歩足を踏み入れただけでわくわくするような場所だった。

 メトロポリタン美術館、ナショナル・ギャラリーでは美術にあまり興味が無くても一度は目にしたことがあるであろう名作もちらほら見かけたが、作品の凄さというよりも美術館内の雰囲気に圧倒された。絵や彫刻についてはよくわからなくても、この館内の雰囲気を味わうために行きたくなるような空間だった。また、メトロポリタン美術館でたまたま源氏物語の企画展があり、そこでたまたま古典でやった『若紫』の屏風絵を見つけて驚いた。日本の美術は国外でも評価されているのを知り、自分とは何も関係がないのになぜか少し嬉しかった。

 MoMAは正直よくわからなかった。おそらくどれも現代アートの最高峰の作品で、見たことがある気がする作品もあった。けれども、それらの作品が持つメッセージは制作された当時の時代背景や作者の人生についての知識がないと汲み取れないもののように思えた。そもそも、そのような現代アート作品の価値というのは誰が決めるのか? 同じような作品でも作者が違えば価値が変わってくるのか? というか、なぜキャンバスに絵の具をまき散らして描く、偶然性に任せた絵に数十億円の価値がつくのか? もしかして、こうやって考えさせるのもアートの一環なのか?…… ある意味一番興味深い空間であったかもしれない。

 また、ワシントンD.C.やニューヨークの街並みもまるで都市デザインの美術館のようだった。どちらも歴史ある築100年近いかそれ以上の建物と近代的なビルとが共存する街だが、その景観は対照的だった。
 ワシントンD.C.は建築物間の距離が広く、また条例により建築物の高さが規制されているため陽当たりがよく、広々とした印象を受けた。住んでいる人も落ち着いた上品な人が多かった。またワシントン・モニュメントを中心に象徴的な建造物が十字を描くように配置されている計画的な都市設計で、綺麗な街だった。
 これに対してニューヨークは、僕が抱いていた期待を裏切らないイメージ通りの摩天楼の大都会だった。しかし立ち並ぶ超高層ビルのせいで陽が当たる時間が極度に短く、常に薄暗かった。摩天楼の中には古いレトロなデザインのビルも多く、タイムズスクエアのようなギラギラした最先端の街という面の他に、意外にもクラシックな一面も持った街だった。
 リバティ島からの帰りの船の先頭から見たマンハッタン島は今回の研修で見た中で最も好きな景色のひとつ。
 このような濃い経験が続く1週間だったが、そのなかでも断トツに強烈な経験だったのが、ミュージカルの本場、ブロードウェイでの『ライオン・キング』の鑑賞だった。声が凄く通り、言葉はほとんど聞き取れないのに、踊りの表現だけでキャラの感情が伝わる。性格がなんとなくわかる。舞台装置と演出にも感動した。特にバッファローの大群のシーンの表現は意外性があり面白いと思った。オーケストラの生演奏だったので、最初と最後の盛り上がるシーンではステージからの音の圧を感じた。語彙力不足で言葉じゃ伝わらないから、とりあえず一度見てみてほしい。そう言い切れるものだった。
幕が下りた後、「言葉の壁を越えて伝わる」って多分こういうことなんだな、と感じた。

 中学校レベルの英語だけで海外旅行は大丈夫だという意見を聞いたことがある。確かに複雑な文法事項を使わなくても意思疎通はできた。しかし、それはあくまで必要最低限の、ただ意志を伝えるだけだということを今回の研修で改めて実感した。何を言おうか準備してから話すのでは無く、相手の言葉をしっかり聞き取るリスニング能力を持ち、なおかつ自分の話したいことを日本語から英語に変換するのではなく、最初から英語で組み立てる能力がないとスムーズな会話のキャッチボールはできないのだと感じた。今回の研修を通じて、大学生での海外留学への興味がより強くなった。そのためにまず英語のボキャブラリーを増やしていきたい。
 今回のたった1週間の旅行でも、この経験はアメリカの文化に肌で触れる貴重な経験になった。異文化を体験する楽しさを感じ、いつかは世界一周の旅に出てみたいという気持ちもより強まった。

 瑞陵高校助成基金の皆様、この度は貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。来年度以降も是非、海外研修助成事業を継続してください。