IT2018報告集_団体3

 第6回海外学習の研究レポート 1年YKMさん 

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サンタ・マリア・デッレ・グラッツェ教会

「最後の晩餐」

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この旅最初の見学場所は、有名な絵画、最後の晩餐です。この絵を見るためには、2か月前に30人15分と決められている予約を取らなければなりません。世界中から予約が殺到するそうで、今回10人そろって見学できることは、本当に幸運なことです。私たちは、その貴重な体験に向けて、十分に気合を入れて挑みました。また、ミラノの町中にドドンと建っているこの教会は、ブラマンテによる設計されたもの。実際の建物は、写真で見たよりも大きく立派でした。

絵を守る工夫

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左:絵がある部屋の前には3枚のガラス扉。二酸化炭素の量を調節する効果があるそう。
中:壁にある隙間は空調機。部屋の気温を保ちます。見学に行った日は温風が吹いていました。
右:これは、第二次世界大戦時の写真。教会は壊滅的な被害を受けましたが、修道院の人々が土嚢を積んで絵を守ったのです。

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作 者 レオナルド・ダ・ヴィンチ
場 所 サンタ・マリア・デッレ・グラッツェ教会
ドミニコ修道院の食堂の壁
制作年 1495年~1498年
修復年 1987年~1999年
技 法 テンペラ技法、一点透視法、遠近法
キリストが処刑される前夜の晩餐を描いた作品。キリストを処刑に追い込んだ裏切者は、左から5番目のユダ。

いざ、部屋に入って絵を見ると本物のすばらしさに感動しました。そして、12人の弟子一人一人の顔をよく見ました。ユダの持つ金貨の入った袋や、ペテロのナイフ、一点透視図法を描くためにキリストの頭に刺した釘の痕、食卓の上のパン…隅から隅まで。
絵を見た第一印象は思ったよりも小さく、全体的にぼんやりと霞んでいることです。なぜぼんやりとして見えるかというと、1987年からの大規模な修復工事が要因です。卵の黄身など粘性のあるものに砕いた鉱物を溶いて描くテンペラ技法では、表面がすぐに劣化し、剥がれてきてしまいます。ですので、昔から何度も様々な人により修復されてきました。その中には、ミケランジェロの姿もあったそう。それらの度重なる修復により、レオナルドの描いたオリジナルと異なる部分が出てきました。現在はそれらの塗り重なった絵の具を取り除き、レオナルドの描いたものだけにし、剥がれたところもそのままになっています。それにしても、完成した当時の絵は、どれほど美しかったでしょうか。ぜひ、見てみたいです。

私が現地に行き、見学して、一番感動したことは、絵の中の光のさす方向です。写真でわかるように、部屋には左側に窓があり、絵はそこから入ってきた光が照らすように右側の壁が光っています。こうなっていることにより、部屋が続いているような感覚に陥りました。

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右の絵は反対側に描かれていた絵です。最後の晩餐と同年代に描かれた作品ですが、比較するとレオナルドの遠近法がどれほど素晴らしいかが分かります。レオナルドの天才差を肌で感じることができました。しかしながら、この作品も素晴らしく、最後の晩餐と比較されて飾ってあることがもったいないぐらいです。
見学は、あっという間で15分の短さを感じました。本当に貴重な経験をさせていただきました。私の人生の財産になったと思います。感謝でいっぱいです。そして、こんなにも素晴らしい絵を残してくれた、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ありがとう。

 

ブレラ美術館

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ミラノのブレラ地区のレストラン街を抜けるとたたずむ立派な建物がブレラ美術館。ナポレオンの40歳の誕生日に公開されたこの美術館は入るとすぐにナポレオン像がお出迎えしてくれます。この建物、1階は美術アカデミー、2階が美術館となっています。さらに2階には図書館も並立していて、ガラス越しから見ることができました。

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チケットを手に入れ、さあ、中へ。本来は時代ごとに部屋が区切られており、古代から現代まで順番に見ることができるのですが、今回は改築工事のため、時代を飛んでの見学となりました。また、建物自体も美しくて、美術作品のようでした。

 

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一番初めに目に飛び込んできた作品は、アンドレア・マンテーニャによって描かれた「死せるキリスト」。この美術館の顔のような作品です。実物の作品は細やかな筆づかいで、この作品の特徴である年老いたマリア様が描かれていました。今にもキリストの死への悲しみが伝わってきます。また、キリストにかけられている布の透け感も素晴らしいものでした。

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つづいての作品はラファエロによって描かれた「聖母の婚礼」。本当に見事な一点透視図法、柔らかな体の曲線とラファエロの才能を感じさせられる作品でした。木の杖の上に花が咲いた男性がマリアの夫になれるという聖書の1シーンがうまくまとめられています。彼の作品によく登場する自身の自画像も美しかったです。さすが、ルネッサンス代表のイケメン。

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この作品はジョバンニ・ベリーニによって描かれた「ピエタ」。ピエタは慈悲という意味です。写真で見るよりもずっと華奢で繊細に描かれているキリストからは、キリストの死への慈悲、まさにピエタが表わされていました。美術館の壁の深い青色がさらにこの絵を引き立てます。

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この絵はカラヴァッジョによって描かれた「エマオの晩餐」。
彼は光と影を巧みに使い、浮き上がってくるような美しい作品を描きます。ですので、この絵が描かれた当時のように薄暗いところで少しの光をともした鑑賞するのが一番美しく見えるそうです。ブレラ美術館では作品に合わせた照明になっていました。そのおかげで、キリストが聖なる光に照らされていることがよく分り、幻想的な雰囲気が漂っていました。

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この作品はフランチェスコ・アイエツによって描かれた「接吻」。何度も写真で見た作品で、本物の美しさに息をのみました。実はイタリアとフランスの関係を表すこの「接吻」という絵は4シリーズまであります。今度機会があれば、残る3枚の絵もみてみたいです。

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こちらは、修復工房。周りはすべてガラス張りになっていて中に様子を見ることができます。この日作業が行われていた絵は先ほどの「接吻」を描いたフランチェスコ・アイエツの自画像でした。イタリアの美術アカデミーで一番人気は修復科だそう。ですので、この美術館の修復工房は、ほとんど展示のようなもので、町のあちらこちらに修復工房があるのです。本当にイタリアの人は伝統を大切にしていました。イタリアの名画が何百年もたった今でも世界中で愛され続けている意味がわかる気がします。

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ブレラ美術館ではたくさんの素晴らしい絵画を見ることができました。また、それだけではなく、素敵な雰囲気で、とても居心地がよく、また訪れたいと強く思いました。
最後にこの写真は、美術館の中で見つけたイタリアの子供たち。こんなにも小さなうちから、本物を見て学んでいるなんて、なんて素敵なことだと思いました。このイタリアの小さな子どもたちと一緒で、「私たちも本物を見せてもらう素晴らしい機会をいただいているんだ」ということを改めて感じました。機会を与えてくださった皆様に、そして、小さな子どもたちに感謝の気持ちでいっぱいです。